山形県東根市においてさくらんぼを中心に生産している株式会社HIGUMAファーム代表取締役社長熊沢儀行氏に、昨年他者が所有していた後継者不在の果樹園の管理を依頼されました。0.5 ヘクタール程度の広さが1農家に管理できる限界と言われているところ、その倍の面積を管理することになり、農家の高齢化や後継者不足が問題となっている点から、今後もこのようなケースが近い将来多く訪れてしまうと想像できました。また、これは東根市だけの問題ではなく、日本全国の深刻な課題だと考えました。この問題を解決するため、この場所を活かして、会員制によるサブスクリプションモデル「『 みんなの農園 』誰でもファーマーズ」を新規事業として設立しました。
経営安定化と収益化の時間差リスクの低減を図りながら、農業に対する社会的関心を高めて就農者を増やすために、月額制の会員を募ります。会員には定期的にさくらんぼやりんごなどの商品が贈られる「事前購入型」のサービスを提供しながら、様々なイベントを通して農業の魅力を伝えていきます。近い将来このビジネスモデルが日本全国に伝わり、世界へと広がりを見せていくことを目指しています。

『質的価値のポイント』
①後継者不在の農地に新たな手法で価値を提供している点
②農地の運営を継続的に行うためサブスクリプションモデルを導入している点
③事業をロールモデルとして日本から世界へと波及していける点

山形県・東根市 株式会社 HIGUMAファーム 代表取締役社長 熊沢 儀行 氏

【背景】農業人口の減少→日本人の食の危機

株式会社HIGUMAファームは山形県東根市においてさくらんぼやラフランス、りんごなどのフルーツを中心に米や野菜などを生産販売している農業法人です。昨年、他社の代表が亡くなり後継者不在となった果樹園の管理を依頼されました。一般的に農地は 0.5 ヘクタール程度の広さが1農家に管理できる限界と言われていますが、今回はその倍の面積を依頼されました。一般的に農地を1年放置すると使える状態まで戻すのに2年かかると言われております、今後もこのようなケースが増えてくるのではと考えます。このような状況が続けば東根市に限らず、日本人の食が危機を迎えます。
現在、日本の農業人口は減少し続けています。農林水産省によると、2000年には389 万人、2010年は 260万人いた農業従事者は、2020年には152万人となり、毎年約10万人減っていることが分かります。日本の農業人口が減少しているのは、①収入が不安定であること ②新規参入から収益化までに時間がかかること ③農業に触れる機会がなく、興味を持たれない、もしくは大変そうという印象があることが主な要因であり、加えて70歳がまだ若手と言われる農家の高齢化です。さくらんぼ農家においても継ぎ手がおらず、「山形の特産といえばさくらんぼ」という状況が今後崩れていくことさえ危惧される状況です。これは山形県内だけに限らず、日本農業、日本人の食に対して大きな課題であると言えます。




【手法】新しい農業モデルの構築

経営安定化と収益化の時間差リスクの低減を図りながら、農業に対する社会的関心を高めて就農者を増やすために、会員制によるサブスクリプションモデル『「 みんなの農園 」誰でもファーマーズ』を導入しました。月額制の会員を募り、会員には定期的にさくらんぼやりんごなどの商品が贈られる「事前購入型」のサービスを提供しています。例えば、月額1,000円で半年ごと(お盆・正月)に 6,000相当の商品が送られてくる仕組みです。一緒に農園を作るファミリーとしてアイデア募集を行い、農作業を体験することで価値を提供します。 毎月1,000円の会費を払う会員が1000人いれば月 1,000,000円の継続収入となります。年収1,000万円が農家として一人前と言われる目標数値ですが、その収益が事前に準備できることになり事業の安定化を図ることができます。

(クラウドファンディングページはこちらから)

【プロセス】農業を様々な形で体験できる仕組み

1000人の会員をどう集めるかが課題となりますが、ファンづくりやネットワーク形成をして会員達と一緒に農園を育てていくモデルを目指しています。その一つとして農園内にカメラを設置し、作物の生育状況を会員が確認できるようにしています。カメラを通して日本全国の会員が「実がなったね」や「そろそろ収穫の時期かな」など好き勝手にコメントできるようチャット機能も充実していきながら、収穫のタイミングには日本全国から山形に集まります。地域の魅力を肌で感じてもらいながら様々な体験をすることができます。また、単発の実施ではなく、継続的にプロジェクトを行うことで徐々にブランディングを強化しながら会員を増やし、変化・成長していく様子を共有することに価値を生み出すことで、提供するプロセスエコノミーの概念を取り入れます。 支援者・会員を募るためには自身の発信力を高めておく必要不可欠です。SNSやHP、イベントへの出店などを通して認知度の向上に努めています。




【結果】工作放置区の課題解決

譲り受けた土地では現在は初期投資の関係もあり、初年度の収支はほぼ同額となりました。今後は問題なく売り上げを伸ばしていくと想定しています。誰も引き取り手のなかった土地が利活用され、これからの新しい農業の形を一歩踏み出したと確信しています。また、この活動を続けていくことで、会員の中から「農家になりたい」という想いを持った人が出てくると期待しています。農業に携わることに憧れを持っている人は少なくないと感じています。しかし、生活面や経済面などの理由でチャレンジしない方やそもそも農業に携わる機会がない方が大半ではないでしょうか。『「 みんなの農園 」誰でもファーマーズ』に関わることで、身近に農業に携わることができ、その素晴らしさを体感することで多くの方に農業をもっと近いものと認識してもらい、農家へなりたいという人達が増えていく仕組みづくりができたと考えています。もちろん、チャレンジする人にはノウハウはしっかりと伝えさせていただきます。




【展望】持続可能な農家モデルの確立を目指して

今後はクラウドファンディングも活用しながら数年後には農園が独立して法人化されており、雇用を生み出し、農園単体での収益化・事業化ができるようになります。この内容をモデルケースに、山形県の各地で同じ形での事業が行われるようになり、遊休農地がなくなり廃園になる農地が減少し、農地や土地の特産物が守られています。 そして山形県だけではなく、各都道府県でも『「みんなの農園 」誰でもファーマーズ』と同じスキームが広がっています。後継者がおらず廃園する農家が増え、土地それぞれの特徴ある農作物が作れなくなる危機から脱し、日本全体の農業人口が増えて後継者不足が解消し、日本の農業、そして日本の食が守られる状況ができています。 将来的には、みんなの農園が全国に 1000個でき、お互いが会員となって支え合う持続可能な農業のあり方を実現する未来に向けて、私たちが経験を通して蓄積したノウハウを共有して展開をサポートして日本各地に『 みんなの農園 』を広げるための講座や講演が開かれていると嬉しいです。 近い将来、この日本の新しい農業の手法が世界のロールモデルとなって、海外の農業にも好影響を与え、持続可能な農家モデルの先駆けとして世界各国から視察が訪れるなど国際的な注目を浴び、グローバル社会における日本の地位向上にも寄与していくことを目指しています。