日本三大提灯まつりの一つ「二本松の提灯祭り」が開催される、福島県二本松市に工房を構える神楽工房はしもと。創業130年続く橋本仏具彫刻店から独立し、神楽工房はしもとの工房主として日々、伝統的民俗芸能(お祭り)の道具の修復等を行い、漆塗や箔押しのスペシャリストとして、作業する傍ら、自ら立ち上げたブランド「篤~toku~」は自らの修復で培った「漆」と「箔押し」の技術と「革」を組み合わせた商品を製作しています。
試作品を作製する際に訪れた革製品を取り扱うB型支援所の方々の技術に感動し、それからも協力を得ながら革製品を製造しています。※B型支援=障害を持つ方が一般企業への就職が不安・困難な場合に、雇用契約を結ばないで就労訓練をおこなうことが可能な就労継続支援のこと。
革製品の中には加工する際に出た廃棄される革の切れ端を使用しており、端の革も動物の大切な命から頂いているものです。出来る限り使用して最後まで大切に使おうと考えています。
「篤~toku~」は本格的な漆の技法や、熟練の職人技、デザインの美しさや緻密さ、高品質さなど、日本の良さが光る本物の製品をお届けしており、新たな価値を提供していることから、質的価値の実現をしている一例と言えます。

『質的価値のポイント』
①創業130年続く老舗の「漆」と「箔押し」の技術と「革」を組み合わせた点
②B型支援所の技術と廃棄物の端の革を使用しての新たな質的価値が生み出した点
③革と漆の漆皮技術の特許申請している程のこれまでにない革製品

福島県・二本松市 神楽工房はしもと 工房主 橋本 篤 氏

【背景・課題】篤~toku~というブランドはどうして出来たのか。

工房主の橋本 篤氏は神楽工房はしもとを創業するまでの約15年間、亡くなった父が使用していた革の名刺入れを使っており、長年使い続けられる革の丈夫さに魅了されていました。
神楽工房はしもとでは、蒔絵を施した漆器を制作し、展覧会に出品していました。その中で漆器にある“高価で扱いが難しい”というイメージが幅広い年齢層には手が出しにくい現状を生み出しているのではと感じていました。 そこで、漆を身近に感じてもらえるように「革」と「漆」と「箔」を組み合わせた作品を制作してみようと試みることで誕生しました。
革製品の試作の際に協力して頂いたB型支援所の月の工賃代は、安い時で月6千円、多くい時でも月1~5万円ほどになります。「高い技術を持っているのに……この状況を多くの方に知ってもらい、障害を持った方の労働環境の向上を目指したい!」という想いを持ち、今日もB型支援所の皆さんと力を合わせ、作品を制作されています。
※B型支援=障害を持つ方が一般企業への就職が不安・困難な場合に、雇用契約を結ばないで就労訓練をおこなうことが可能な就労継続支援のこと



【手法】「革」と「漆」と「箔」を組み合わせる技法

神楽工房はしもとは、福島県二本松市で約130年続く橋本仏具彫刻店から、修復業に特化するために作られました。文化財の修復も行い、福島県内はもとより、全国でも数少ない漆塗と金箔のスペシャリストである工房のひとつです。そして、篤~toku~とは革製品を加工の際に余った切れ端を使用して新しい製品を作っています。切れ端の革も動物の大切な命から頂いているものであり、捨てられる革にもデザインを加える事で新しい製品としての命が芽生えます。出来る限り使用して最後まで大切に使うべきであると考えています。

【プロセス】漆塗、箔押しと革を組み合わせて作品を創る高度な技術

革に漆を染み込ませる技術は「漆皮(しっぴ)」という技法で呼ばれ、1300年前から続いています。革を漆で固めることで強度が得られる特徴を活かし、甲冑作りに応用されていました。革本来の質感を残すため、革の部位やシワを見極めながら、革に吸わせる漆の量を抑える加減が一番難しく、漆を吸わせすぎると硬くなってしまいます。逆に漆が少なすぎると色ムラになってしまい、高度な技術と加減を見極める経験が求められる技法です。しかし、革と漆は、実は相性抜群であり、革の質感を残しながら漆を塗ることで、「丈夫さが増して長く使える」「長い時間をかけて味が出てくる」「防カビ効果になる」など多くのメリットがあります。
箔押しは、漆を使って金箔を貼り付ける伝統技法のことを指します。1枚約0.1ミクロンメーター、1000枚重ねてやっとコピー用紙1枚分になるという薄さの金箔を、丁寧に革に押していきます。


【結果】世界的ブランドと共に日本全国に

篤~toku~の商品であるアクセサリーのデザインが、世界的デザイナーのコシノジュンコ氏の目に止まり『JUNKO KOSHINO』ブランドから商品開発の依頼を受ける事になりました。その他、革のテーブルウェアは高級旅館から受注がある販売した実績や東京FM『J-WAVE BLUE IN GREEN』 の「TAKUMI Family Days Project」で一輪挿しをサブスクレプションで販売しております。県内問わず、県外からも依頼もあり生産を進めています。

【展望】漆皮を日本の特産品へ

漆製造業と皮革産業は年々国内消費量が落ち込んでいる状態なので、この技術を使うことで少しでも両産業が活発になれば良いと思います。
現在、漆皮の技術の特許申請を行っており、特許が取れたら国内生産者にはライセンスフリーにすることも考えています。高級で品物が売れない蒔絵師や漆器屋さんの扱う新しい素材としての革、レザークラフトを行っている人達にとって新しい染料としての漆、お互いの仕事でお互いの素材を使う事で2つの産業の消費量が上がるのが理想だと思います。
そして、漆革が日本の新しい特産物になれば最高です。


革と漆のしおり

革と黒漆のバングル



革と黒漆の花瓶

革と漆のプレート