岐阜県は、長良川や木曽川が知られるように自然が豊かで、県内各地がそれぞれの気候や地形にあわせて独自の文化や技術で発展させてきました。美濃地方の和紙や関市の刃物などの全国的に人気のある産業が多く、いまも「モノづくり大国」として知られています。
昨今の消費者ニーズは多様化しています。安いものはどんどん安くなり、その一方でハイブランドのものも人気です。安く売る量販店に対して、中小のメーカーは高い商品を売らざるを得なくなりますが、消費者にとって手が届く価格で、なおかつ誰もが頷く品質や世界観も備えた商品は市場のなかで少なくなっています。
量ではなく質の価値を追い求めて、テクノロジーを活用しながらそれを消費者に提供する「第3の道」ともいうべき方向にこそ可能性を感じ「光洋陶器」では商品開発を進められました。とりわけ伝統産業の「モノづくり」の世界では、手作業が重宝されがちですが生産性や効率、コストの観点から、自動化は避けられません。単純作業は機械に置き換え、技術や改善を加えるなどの付加価値を与える作業に関しては手作業にこだわり、高品質かつ消費者の手の届く商品開発を進め、陶器業界において独自の路線を確立し、質的価値を創造している事例です。

『質的価値のポイント』
①時代の変化から新しい価値を見出した点
②地域のネットワークを生かした上での共存を実現している点
③地方のニーズを広い事業展開している点

岐阜県・岐阜市 光洋陶器 代表取締役社長 加藤 伸治氏

【背景・課題】モノづくりの国岐阜が手掛けるプロ向けの製品づくり

長良川や木曽川がしられるように自然が豊かで、県内の各地がそれぞれの気候や地形にあわせて独自の文化や技術を発展させ、「モノづくり大国」として知られています。なかでも特にシェア率が高いのが陶磁器です。業界自体は、大きい工場で大量にモノをつくるサイクルが主流ですが、一方では嗜好の多様化が進んできており、個々の細分化されたマーケットに向けて高価格帯の製品をつくる流れも顕著になってきました。

【手法】泥臭くても「第三の道」を突き進む

安いものはどんどん安くなり、その一方でハイブランドのものも人気。安く売る量販店に対して、中小のメーカーは高い商品を売らざるを得なくなりました。しかしこうなると、消費者にとって手が届く価格で、なおかつ誰もが頷く品質や世界観も備えた商品は市場のなかで少なくなってしまいます。昨今はお客様のニーズや嗜好もさらに細かくなっており、こだわりはどこまでも追及する傾向となっています。その中で、サービスはもちろんのこと、ブランド力を磨かないといけません。
商品の付加価値を上げるとともに、いかに作業効率を上げてコストを下げるか。規模の世界の話になれば日本は海外に太刀打ちできません。また、高単価の嗜好品をつくるのであれば、いまの時代はユニークで発信力をもつ個人の作家がたくさんいます。「大量生産か、高単価か」「手作業か、機械か」などという問題に対して、あくまでもその中間である「第3の道」を試行錯誤しながら可能性をつくることにチャレンジしました。

【プロセス】質的価値から地域の共感を得る

何ごとも量で量る世界から脱却し、質の追求を目指すようになりました。もともとその地域が備えている独自の力や魅力に、私たちのようなまちづくりの団体や、光洋陶器のような企業の力が加わることでストーリーを生み出します。それが、地域の内外から『共感』を得ることに繋がるはずです。そうしてよい循環が生まれることが、その地域の持続可能性にもつながっていくのではないでしょうか。

【結果】ネットワークそのものに価値がある

もともとは各社が分業体制をとって伸びた地域でもあるので、そのときにできあがったネットワークは現在も残っています。実は世界的にみても、こうした地域は珍しいです。ただし『持続可能性』という点でいえば、いまは境目。業界でいえば生産量は最盛期の五分の一で、闇雲に量を求めていた時代から減るのはわかりますが、実際にサプライチェーンの中で辞める企業や個人が増えました。このままでは、連綿と紡いできたネットワークが崩れてしまう。世界的にみてもネットワークそのものには価値があり、もし一度壊れれば取り返しはつきません。そうした危機感は東濃地方内で共有されており、特にここ1年、企業同士がどう持続可能なかたちで付き合い、生き残っていくかが話し合われています。1社だけがこの地域で生き残れるものでは意味がないのです。

【展望】

自分たちだけで何か行動を起こすというよりは、自分たちが水面に落とした石のような『起点』となり、地域の課題を解決するスタンスです。そこで大事にしているのが『つなぐ』という意識。SDGsの17個目も『パートナーシップで目標を達成しよう』という目標だが、個々の力ではできないことも各種の団体や企業が集まって取り組めば、多くの課題は解決できます。青年会議所がその起点になるには、地域の方々のニーズを拾い、そのうえで声を上げることが大切であり、時代に合わせて変える姿勢は必要不可欠ですが、その先に続いていく仕組みづくりが重要です。しかし、企業側から地域を巻き込んで動こうとすると、1社でできることはかぎられます。まずは各自が自分の足で立つことが大切であり、そのうえで互いに連携して、後世に残るネットワークや仕組みをつくる際、青年会議所あるいは行政に『つなぐ』役割をはたすことで、大きな可能性が生まれてきます。




質的価値創造 × 日本の新時代ビジョン
日本青年会議所 × PHP総研
『Voice』2021年9月号掲載
(引用記事はこちら)