淡路島とは「国生みの神話」にも記された「特別な島」です。2016年4月には「日本遺産」に認定されましたが、「国生み」の伝承を島内にある3市それぞれが足並みを揃えるまでは簡単ではありませんでした。島内の住民は淡路島や市よりもそれぞれの地域にアイデンティティを持っています。バラバラの3市に「一つの芯」を通しながら、3市の魅力を一つのストーリーにまとめる作業はとても困難でしたが、JCI淡路が汗をかき「日本遺産」への登録を実現しました。
「日本遺産」の認定はあくまでも目的ではなく手段であり、実際に認定された後もJCI淡路はその意義や意味を島民に伝えるべく様々な事業を展開してきました。これからも「一市運動」を巻き起こしながら「淡路島」としての魅力をどう発信するかが最大のテーマであり、今後3市を横断して認定を受けることができた「日本遺産」にまつわる活動は、島民の目を一つの方向に向ける意味でも、単なる光促進以上の「無形の価値」を生み出した活動が質的価値といえます。

『質的価値のポイント』
①国生み神話という歴史的なストーリーから地域の魅力を捉え直した点
②市や町の枠組みを越え、広い目線で地域の魅力を捉える目線
③行政等を巻き込んだ運動展開

兵庫県・淡路市 兵庫県・淡路「日本遺産 国生みの島・淡路」

【背景・課題】国生みの島・バラバラの3市

淡路島とは「古事記」の冒頭に記され、「国生み」の伝承として知られている「特別な島」ですが、「国生み」の伝承を島全体で共有してまちおこしを行うまでには至りませんでした。
島内には洲本市、南あわじ市、淡路市の3市があり、地域ごとの特色が各市バラバラで、洲本市は商売人気質が強いが、南あわじ市は農業・酪農が盛んといったように生業が違います。それぞれの足並みが揃わず、島全体で一つになって何かを発信することがありませんでした。

【手法】「一つの芯」をとおす

淡路島という単位で考えたとき、唯一無二の絶対的な価値は「国生みの神話」でした。以前に失敗しましたが、まちの中心に据えるには最適と考えます。
「国生みの神話」をコンセプトとしたまちづくりが浮かんでいた矢先に「日本遺産」の話を聞き、チャレンジしようと話し合いました。
JCI淡路にとって「日本遺産」とはそもそもの目的でなく、「国生みの神話」によるまちづくりを加速させるための手段でした。それは、別の方向を向く3市のあいだに「一つの芯」をとおすことを意味しています。

【プロセス】とにかく汗をかく

「日本遺産」の申請は自治体が行なう必要があるが、淡路島は3市の複雑な状況があるので、JCI淡路が汗をかき、段取りを整えました。何度も3つの市役所と県民局の4カ所に足を運び、文化庁とも話し合いを重ねました。
3市それぞれの出身メンバーがいるJCI淡路にはさまざまなコネクションがあり、多様な組織にアプローチする潜在能力がありました。出身も業種も価値観も異なる多種多様な人間が集まり、青年会議所という一つの言葉だけで横で繋がっていることが、淡路だけでなく青年会議所という組織の強みです。

【結果】「日本遺産」の認定

2016年に「日本遺産」の認定を受けました。次の4つのストーリーと31の文化財で構成されています。
1.古事記に描かれた天地創造の物語「国生み神話」
2.金属器時代の幕明けをもたらした「海の民」
3.塩づくりと航海術で王権を支えた「海人」
4.食で都の暮らしを彩った「御食国」
この4つの物語はさまざまな淡路島の魅力を網羅しています。

【展望】「一市運動」を巻き起こしていく

「日本遺産」の認定はあくまでも目的ではなく手段であり、実際に認定されたのちも、JCI淡路はその意義や意味を島民に伝えるべく、「淡路島くにうみミュージアム」などの事業を開催したほか、淡路島日本遺産委員会をつうじ、書籍を編んだり、各種パンフレットを作成したり、また「日本遺産フェスティバル」や3市それぞれでのワークショップの開催など多岐にわたる活動に携わってきました。
3市を横断して認定を受けることができた「日本遺産」にまつわる活動は、島民の目を一つの方向に向ける意味でも、観光促進以上の「無形の価値」を生み出しているといえます。
淡路島は、人口は右肩下がりで、経済圏という意味では神戸や明石に勝つのは難しいが、どうやって輝くのかと考えたときに、歴史など足元にありながら発信できてこなかった要素をパッケージすることは、対外的には淡路島の魅力を伝えることに、対内的には結束を強めて「一市運動」へと繋がります。




質的価値創造 × 日本の新時代ビジョン
日本青年会議所 × PHP総研
『Voice』2021年7月号掲載
(引用記事はこちら)