秋の豊作を祈念して開催されている七夕まつりの一つに、秋田県能代市で寛保年間(1741~1744年)に始まった伝統行事の能代七夕「天空の不夜城」があります。高さ五丈八尺(約17.6m)の「嘉六」と24.1mの高さを誇る「愛季」の大型城郭灯篭2基を大勢の若者たちの手で能代のまちを練り歩く日本代表するお祭りの一つです。
しかし、この伝統的なお祭りは明治時代に電気が普及して能代市内に電線が張り巡らされた影響で、灯篭の高さ制限をされた過去があります。月日は流れ、電線地中化により大型灯籠が運航できる環境が整い、立ち上がったのがJCI能代のメンバーでした。能代を元気にするため、地域の賑わいをつくるために大型灯籠を復活させたい一心で動き出しましたが、大型灯籠の復活で観光客を増やすことだけを目的としませんでした。それで本当にまちが元気になるとは考えなかったからです。
「できない」を「できる」に変える活動を行ってきましたが、これからはこれを続けることが課題となります。「不夜城」は単なる祭りではなく、まちがよい方向に向かうための象徴となり、前向きなサイクルが生まれることを理想にもちながらこれからも後世へ受け継がれるために続けていきます。

『質的価値のポイント』
①新たなものを構築するのではなく、歴史や伝統、文化的な目線で地域に眠っている財産にスポットを当てた点
②あえて有料席を設けることで観客への特別感という価値を提供
③行政、地域他団体を巻き込み地域一丸となった運動展開

秋田県・能代市 能代七夕「天空の不夜城」

【背景・課題】能代を元気にするために、地域の賑わいをつくるために

能代市では古来より祭りごととして、能代七夕が開催されてきたが、経済効果や故郷の活力源とまでは至っていなかった。
能代を元気にするため、観光の目玉をつくるが、交流人口を増やすだけではなく「その先」へつなげたい。

【手法】「日本一」をつくった能代っ子の絆

JCI能代は「伝統文化の継承」「通念を通じたイベント事業」「地域住民との連帯感創出」「観光資源活性化」「地域の象徴・地域ブランド」「誇りに満ちた愛郷心」などのテーマから、大型灯篭復活をメルクマールに能代を盛り上げる未来をイメージしていた。大型灯篭の復活で、経済や少子化といった課題解決の特効薬になるわけがなく、祭りの設えだけでは「たんなる祭り」の事業で終わってしまう。大型灯篭の復活で観光客を増やすことだけを目的とすれば、能代を「量のモノサシ」で測ることとなる。しかし、その目的を達成して本当にまちが元気になるとは思わなかった。そんなJCI能代の構想に共鳴したのが、能代商工会議所だった。さらに能代市役所も賛同し、強固な絆を築いた。
城郭灯篭は、青森県五所川原市の「五所川原立佞武多」が有名で、高さは23mを上回る。早くから勉強会として五所川原市を訪ねていたが、「立佞武多を超える日本一の城郭灯篭をつくりたいと」明かしたところ、嫌な顔をされるどころか「いいことだと思う」と背中を押されたという。能代だけではなく地域全体を盛り上げたいという気持ちが通じたのだろう。

【プロセス】若い世代にいかに継承していくか

灯篭は使われなくなった体育館などで政策・保管されている。現在は骨組みに針金を用いて、中身が空洞化されて光が鮮やかに髪を照らすように工夫されている。地元の学校の学生やボランティアも制作を手伝っている。
能代にはさまざまな魅力がある。58回の全国優勝を誇る能代工業高校(能代西高)を筆頭に「バスケのまち」として。天然秋田杉の産地で「東洋一の木都」とも呼ばれ。旧料亭「金勇」では囲碁の七大タイトル戦の1つである本因坊戦が行われる。白神山地が聳えるなど自然も豊かで、一方で北国の割には雪が積もりにくい。JAXAもロケット実験場を構えている。
「能代には実に多様な資源」がある。ただ、それを自覚しているものは少ない。若い世代は地元のことを知らな過ぎる。現代は、情報量が多すぎて、他の地域と比較することでしか自分のまちを評価できていないように感じる。よそと比較する時点で「量的価値」の考え方であり、日本全国で同じ現象が起きている。その課題に向き合わなくてはいけない。

【結果】「地域全体」を意識。共に地域を盛り上げる

能代七夕天空の不夜城は8月3・4日に開催される。この2日間に設定したのは、8月3日から6日の秋田灯篭竿燈まつりと8月2日から7日の青森ねぶた祭と一緒に観光していただきたい思いからだ。秋田市から能代、青森までは鉄道で移動できる。能代駅と青森県川部駅を繋ぐ五能線は、その絶景から「乗ってみたいローカル線」として有名であり、他県を含めた「地域全体」を意識して活動している。

【展望】「不滅城」はもっと成長できる

能代の人全員と「不夜城」を共有したい。一人ひとりが主人公として参加しているかといえば、まだ足りない。能代に住む子どもから大人まで「不夜城、観に来てよ!」と自信を持てるところまで発展させられれば、必然的に外の方々も足を運ぶような立派なものになるはず。「不夜城」を能代というまちに閉じこもらせず、「地域の祭り」として、より広域の人びとを巻き込んでいきたい。




質的価値創造 × 日本の新時代ビジョン
日本青年会議所 × PHP総研
『Voice』2021年5月号掲載
(引用記事はこちら)