「北海道といえば牛乳」「仙台といえば牛タン」などのようなものを沼津でもつくりたい。その時に注目したのが深海魚でした。「深海魚の聖地」を全国へ広めるためにイベントを開催しましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で各種イベントが中止。そんな中始めたのが深海魚直送便でした。深海魚が地元の人たちだけで消費されていることに勿体なさを感じており、本来なら捨ててしまうものを消費者に届けることで深海魚に新たな価値を与えるとともに地元に賑わいをもたらしてくれました。
新しい価値を生み出すことは大変なことですが、そこに楽しさを求めることが新たな質的価値を生み出すポイントかもしれません。自分が楽しいと思いながら始めた取り組みが、次第に地域の人びとに理解されて、やがては喜ばれて共感が広がっていく。その繰り返しが質的価値につながる醍醐味だと教えてくれる事例であります。

『質的価値のポイント』
①廃棄物として扱われていた深海魚を有効活用した点
②他地域から移住してきた目線で地域の魅力を見つめ直した点
③「ゼロからイチを生み出す」ことを強く意識している点

静岡県・沼津市 深海魚直送便 青山 沙織 氏

【背景・課題】「沼津」のブランディング化(認知拡大、名物)をしたい

静岡県内のイメージは静岡市や浜松市が先行している。沼津港はしられているかもしれないが、伊豆半島の中では熱海や三島と比べて印象が弱いのかもしれない。他の地域から印象が薄い沼津の代表的なものをつくる。「北海道といえば牛乳」「仙台といえば牛タン」などのようなものを沼津でもつくりたい。

【手法】「深海魚の聖地」を全国へ

沼津は深海魚の「聖地」として有名で、駿河湾の豊かな自然がもたらす恵みであります。「深海魚アートデザインコンテスト」や「へだ深海魚フェスティバル」を開催し、深海魚のイメージを広めていったが、新型コロナウイルスの感染拡大で中止。新たに立ち上がったのが「深海魚直送便」でした。夕方に水揚げされた深海魚をその日のうちに発送し、普通であれば市場に出されるタイミングで家庭に届けるサービスを展開していきました。

【プロセス】いま光を浴びていない深海魚に価値をつけたい

もともとお祭りなどで、深海魚を買いに来ているお客さんがたくさんいた。その地域でしか消費されていない珍しい魚を欲しがる人は多くいるはず。しかし、地元の漁師さんはその魅力に気付かず、住民に配ってしまうためなかなか手に入らなかった。本来はいくらお金を出しても手に入れられないものであり、そこにはお金で表せない価値がある。いま光を浴びていない魚に価値をつけていきたいと真摯に取り組んでいった結果、周囲が後押ししがあり「深海魚直送便」の認知度は高まった。

【結果】「ゼロ」の状態から「イチ」を生み出すことが「楽しい」につながる

「楽しい」という気持ちを大切にすることで、新しい価値を生み出していく。自分が楽しいと思いながら始めたとりくみが、次第に地域の人びとに理解されて、やがては喜ばれて共感が広がっていく。一人ひとりが自分にとっての「楽しい」と思えることを深めていくことで、「ゼロ」の状態から「イチ」を生み出すことにつながっていく。その繰り返しが多様な地域解決にも結び付くのではないだろうか。

【展望】共感・共有が個人の限界を突破する

個人での活動はゼロから新しい価値を生み出せるなどの多くのメリットがあるが、魅力を外に発信するには、限界がありそれはデメリット。青年会議所の強みの一つにはネットワークであり、おそらく個人で風穴を空けようとされている肩の手助けになるはず。大きな波及の先に地域の人びと自身が自分たちの足元にある価値を共有・共感することが質的価値を体現できる。








質的価値創造 × 日本の新時代ビジョン
日本青年会議所 × PHP総研
『Voice』2021年8月号掲載
(引用記事はこちら)